キリキリ痛みますか?それともズーンとくる痛みですか?
新興国でありがちなお腹のトラブル。
腹痛、下痢、嘔吐の症状が出たため、私は病院に行った。
英語に自信のない私は、お医者さんの問診に日本語通訳を同伴した。
お医者さんは触診をしながら、痛いところがあれば言ってくれと
言っているらしい。
痛い箇所を申告すると、通訳さんが以下のように片言で通訳してくれた
「キリキリ イタミマスカ?ソレトモ ズーント イタイデスカ?」
これは万国共通の質問なのだな、と思った。
おかしいと思われるかもしれないが、
昔からこの質問がすげー苦手だ。自分の症状を何と表現していいかわからない。
むしろ、他の人たちがこの類の質問に対して回答を導き出していることに対してリスペクトが止まらない。
身体の内部の痛みについては、生まれてから死ぬまで人と共有することができないじゃないか。
そのため、学校の先生から「はーいみなさん、これがズーン系の痛みですよー」と教えてもらう機会もなければ、「あっこれキリキリ系だよね超わかる」と身内で確認することもできなければ、「お前、その痛みはズッシリ系だろ!」と他者からアドバイスを受けることもできない。
つまり、自分の回答の確からしさを確認し、自信を得ることができない。
ましてや、なぜ擬態語で表現しなければならないのか。
キリキリやズーンの言葉のニュアンスを、自分が正確に受け取っているかも微妙だ。
キリキリの言葉のイメージは、断続的に刺激的な痛みがくる感じだろうか。
ズーンの方は、鈍い痛みが途切れることなく続く感じだろうか?
キリキリズーンに対する自分の理解について、未だに全く自信がない。きちんと形容してくれないと困る。
かと言って、「針で刺されたような痛みですか?」と言われても難しい。
まず針で刺された経験が人生でそんなにない。
針で刺される痛み、と言われると、どこか一部分がピンポイントに痛むイメージではないかと推測されるが、身体内部の痛みで針のように超局所的な痛みを感じることがあるだろうか?お医者さんの言っている針のサイズはどれくらいのイメージなんだろうか。考えすぎて完全に迷宮入りだ。
同様に「どれくらい痛みますか?激しい痛みですか?」も難しい。
これもまた、人と分かち合ったことのない主観の問題だ。
死ぬほど痛い、という比喩表現も正確では無い。死んだことがないからだ。
鼻からスイカが出るくらい痛い、と言うのが出産の痛みの形容として有名だが、誰も鼻からスイカ出したことがないのになぜ一定の支持を得ているのかわからない。
痛みの強さ一覧表が世界保健機関から公開されているなら話は別だが、
個々人の忍耐力と経験によってこの回答は大きく異なるはずだ。
そして、このインタビューの結果が問診結果に影響するため、
非常に慎重に言葉を選ばなければならないのだ。
さて、これだけ言いたいだけ言ったものの、お医者さん側の気持ちもわかる。
前提は同じで、内側の痛みは他人と共有できないにも関わらず、
何らかの方法で痛みの状況を分析し、診断結果を出さなければならない立場だ。
痛がっている患者から正確に痛みの情報切り分けをし、特定していくのは至難の技だろう。
今のキリキリズーンが最良の方法では無いと思うものの、
僕自身代替案は思いつかない。
何か良い作戦がある人はぜひ教えてください。
やめさせてもらうわ。